Kyoto Univ.- KAIST Joint Workshop
On Nano-mechanics and Nano-technology
 
May 20-23, 2006


工学研究科 機械理工学専攻  嶋田 隆広

1. はじめに

2004年5月20日〜23日の4日間,京都大学と韓国科学技術院(Korea Advanced Institute of Science and Technology : KAIST)は,両大学の機械系博士課程学生同士の研究発表および意見交換,国際交流を目的とし,Kyoto Univ. and KAIST 1st Joint Workshopを行った.Seyoung Im教授(KAIST)と北村隆行教授(京都大学)は,かねてより深い交流があり,今回,21世紀COEプログラム「動的機能機械システムの数理モデルと設計論」−複雑系の科学による機械工学の新たな展開−(京都大学側)とCenter for Nano Scale Mechatronics & Manufacturing BK21 KAIST Valufacture Institute of Mechanical Engineering (KAIST側)による支援を受け,第一回目のWorkshop開催に至った.運営は博士課程学生が主体となり,KAIST側はSungjin Kwon氏とYoungmin Lee氏が,京都大学側は私がワークショップ代表者として活発な意見交換を行い,スケジュールを決定した.ワークショップでは,京都大学から9人(北村研6人,宮崎研3人),KAISTから8人の博士課程学生が2日間に渡って研究発表・意見交換を行った.本報告では,ワークショップにおける研究発表だけでなく,学生交流の様子についても記す.

2. 韓国訪問(ソウル-デジョン)

韓国は朝鮮半島の南半部に位置し,日本海を挟んで日本の隣国となっている.大阪-Incheon間は航空機で約1時間半程度と非常に近く,日本と類似の文化も多く見られる.5月20日,関西国際空港から韓国Incheon空港へのフライトを経て,ソウルに到着した.韓国の首都ソウルは人口約1000万人,面積約600km2の大都市であり,人口密度は世界一高い都市と言われている.5月21日には,ソウルよりKAIST本校のあるデジャンへと向かった.KAISTに到着した我々はIm教授および同研究室の学生に歓迎していただいた.夕食はKAIST内のレストランで学生も含め全員で韓国料理を頂いた(図1).食事後は,私を含む運営者同士がミーティングルームに集まり,翌日のワークショップのための準備や事前確認などを行った.

図1-1 図1-2
図1 歓談を愉しむ学生達

3. Joint Workshop

韓国滞在3日目(5月22日),Kyoto Univ. and KAIST 1st Joint Workshopが開催された(図2).本ワークショップのスケジュールを(資料1)として後に示す.ワークショップ一日目は4セッション,二日目は2セッションから成り,1セッションにつき3〜4人,京都大学側とKAIST側が交互に研究成果のプレゼンテーションを行った.ワークショップの進行も学生が主体となって動き,各セッションの座長は博士課程学生が行い,KAIST2名,京都大学2名がそれぞれ担当した(図3).プレゼンテーション20分,質疑応答5分で行い,2日間で17名の博士課程学生が発表を行った.研究内容は,連続体力学に基づく巨視的な強度評価(シミュレーション)研究が3件,破壊力学(異方性材料の破壊力学,3次元形状き裂の破壊力学など,報告者の発表含む)関連が5件,より微視的な強度評価の領域(ひずみ勾配理論,転位論)が2件であり,他は量子力学を用いた機械的特性・強度および物性の評価に関するものであった.

原子を扱ったシミュレーションでは,京都大学側は,量子力学に基づく第一原理解析を用い,電子/原子レベルからの材料強度・物性の厳密な評価を行う研究が主となっていた.一方,KAIST側は,Al(111)表面のスクラッチシミュレーション,カーボンナノチューブ(CNT)の生成やボンドの組換え過程の解明,多層CNT解析のための準連続体理論適用など大規模解析に目を向けた研究が多く,計算時間短縮のための並列化に関する研究も同時に行われていた.異なる視点からのアプローチのため,お互いに興味を引かれ合い,多くの質疑・応答が行われた(図4).また,ナノ〜サブミクロンオーダーの材料の実験およびFEM解析による強度評価が発表された.また,現理論の改善および新しい近似法の導入など解析手法の発展に繋がる研究も行われていた.総じて,京都大学およびKAISTの研究内容は,電子/原子/ナノ/サブミクロンオーダーという広い範囲に渡っており(図5),まさにマルチスケールな視点から材料強度・物性を解明していく基幹的なものであると感じた.

図2
図2 ワークショップスケジュール
図3
図3 座長を務める学生
図4
図4 質疑応答の様子
図5-1 図5-2 図5-3
図5 プレゼンテーションの様子

ワークショップ4日目(5月23日)の最終では,北村隆行教授より機械系博士課程学生へ向けて教育的な意味を込めた講義をして頂いた.自分の立っている場所を明確にし,目的を見つめ,そこに潜む基本的・根本的な概念を見つけ出すことが研究で最も必要であり,かつ重要なことであるという示唆は,我々にとってもKAISTの学生にとっても良き道標となった.その講演を受ける形で,Im教授から今回のワークショップの成功と次回開催の誓いがあり,閉会となった(図6).

その後,簡単な昼食を取りながら,学生同士お互いの連絡先を交換した.何人かの学生は互いの論文を交換している様子もあった.KAISTを後にした我々は,その日の午後の便で帰国した.

閉会式の様子
図6 閉会式

4. Kyoto Univ. and KAIST 1st Joint Workshop参加者アンケート

今回のワークショップのよかった点・反省点を明確にし,次回ワークショップをよりよきものにするために,京都大学側からの参加者全員にアンケートを行った.アンケートの結果を(資料2)として添付する.

アンケート結果を簡単に総括する.英語でのプレゼンテーションの経験のある学生は少なくはないものの,その回数は数回にとどまっている.今回の企画はまさに,英語での発表の機会を与えるものであり,本Workshopを通じて各々がよい経験であったとしている.また,発表を通じて,良かった点だけでなく問題点を見つけることができたようであり,大きな刺激になったようである.これらから、学生のこれからの国際的な研究活動特を促進する効果があったと思われる.とくに,英語によるコミュニケーションは国際的な研究者となる上で,必要不可欠なものであり,その重要性を再認識したという声も多かった.一方,Workshopの改善点として,十分な質疑応答時間をとることやアブストラクトの作成,研究設備見学といったツアーを盛り込む必要があることなどがあげられている.今回のWorkshopの運営者として,これらの意見を真に受け止め,次回の成功に繋げたいと思う所存である.