Asian Advanced Vibration and Control Forum
by and for Young Researchers
 
October 22 - 24, 2007
Room 211, Faculty of Engineering Department of Physics Building, Kyoto University


工学研究科 機械理工学専攻 助教 山田 啓介
航空宇宙工学専攻 博士3回 坂東 麻衣
機械理工学専攻 博士2回 竹岡 郁
機械理工学専攻 博士1回 河野 大輔
機械理工学専攻 博士1回 金田 さやか

1. はじめに

2007年10月22日(月)から10月24日(水)の3日間,京都大学と韓国科学技術院(Korea Advanced Institute of Science and Technology,以下KAIST)の振動工学研究室の若手研究者を中心に,研究に関する意見交換と両大学の研究者間の交流を目的としてAsian Advanced Vibration and Control Forum by and for Young Researchers(以下AAVCF)を開催した.今回のフォーラムは,昨年の夏にKAIST(韓国,デジョン)で開催した第1回に続く第2回のJoint Workshopであり,今回は京都大学で開催した.Joint Workshopの計画・運営は今回も両国の博士課程の学生を含む若手研究者が中心になって行った.ただし,京都大学の松久寛教授とKAISTのChong-Won Lee教授の助力が大きかったことを合わせて記しておく.Workshopには京都大学から5名(機械理工学専攻 松久研1名・小森雅研1名・松原研1名・椹木研1名,航空宇宙工学専攻 市川研1名),KAISTから3名(NOVIC Lee研1名・Park研1名・Kim研1名)の若手研究者がそれぞれ参加し,英語で研究発表と意見交換を行った.また,今回は特別講演を企画し,KAISTのLee教授,Park教授,Kim教授,そして京都大学の宇津野准教授,中西講師を講演者として招待した.京都大学の院生を中心に,特別講演には一般の学生も多数聴講に訪れた.第1回から一貫して本フォーラムの目的は,両国間の研究に関する情報の交換や英語によるプレゼンテーションの訓練にとどまらず,Workshopの企画と運営の経験を積み,その過程も含めて両国の若手研究者が交流し,お互いの文化を学ぶことにある.そこで,本報告書ではWorkshopと両国の研究者間の交流の両方について述べる.

なお,本フォーラムは,21世紀COEプログラム「動的機能機械システムの数理モデルと設計論」−複雑系の科学による機械工学の新たな展開−の助成を受けたことを付記し,謝意を表する.

2. Workshop

10月22日,23日の2日間は通常のWorkshopを行い,最終日の24日は自由参加型の意見交換・交流日とした.22日は特別講演3件,一般講演3件,23日は特別講演2件,一般講演5件を企画したが,当日の運営の都合により,実際には一部のプログラムを変更した.ただし,講演の中止や追加はなかった.開会や閉会のスピーチと特別講演の座長は松久教授,椹木教授等が務めたが,一般講演の座長やWorkshop全体の進行は全て若手研究者により執り行われた.特別講演はプレゼンテーション50分,質疑応答10分,一般講演はプレゼンテーション20分,質疑応答5分とし,基本的に京都大学とKAISTの参加者で交互に発表した.なお,第1回のWorkshopの経験を生かし,質疑応答が白熱している場合は制限時間によらず時間を自由に延長できることにして,セッション間の休憩時間等で全体の時間調整を行った.また,今回も前回と同様にアブストラクト集を作成し,事前に参加者全員に配布した.

発表の内容はAsian Advanced Vibration and Control Forum by and for Young Researchersの名の通り,振動や制御に関するものが中心であったが,京都大学は学術的な基礎研究が中心であるのに対し,KAISTはより実用に近い研究内容であり,同じ研究分野の研究者でありながらお互いに目新しい発表内容が多かった.日本と韓国で大学の研究に求められているものが異なるようである.

2日目の午後には京都大学の実験室・研究室紹介(松久研,松原研,椹木研の各実験室または研究室および学生のKART)を行い,各研究室の若手研究者や学生,KARTのメンバーが英語で実験装置等の説明を行った.プレゼンテーションに出てきた実験装置を実際に紹介することでより理解が深まるとともに,装置の紹介を英語で行った学生達にとっては英語の必要性を知るよい機会となった.

図1
図1 Workshopでの討論の様子
図2
図2 プレゼンテーションの様子
図3
図3 Workshopの講演者達
図4
図4 実験室紹介の様子
図5
図5 研究室紹介の様子
図6
図6 集合写真

3. 交流会

1日目の夜に松久教授宅でBanquetを開いた.Banquetでは比叡山から琵琶湖や京都を眺め,寿司や刺身を食べながら参加者全員で歓談を楽しんだ.その中でさまざまな話題が出たが,特に印象に残っていることは韓国の大学院の博士課程の学生は通常で5年,長い場合で8年ほどの期間を博士号の取得に要するということである.しかし,KAISTでは学費が全員免除され,寮も十分に整備されており,かつ研究プロジェクトのメンバーの場合は給料が支払われるということで,日本の博士課程の学生に比べると金銭的には恵まれている.また,博士号の社会的価値が日本より圧倒的に高く,それらの事実は博士課程に進学する学生が日本よりずいぶん多いことからも分かる.韓国においても日本と同様に,博士号取得後に教育職に就くことは難しいそうだが,企業への就職の機会や就職後の待遇は充実していると思われる.

昨年のWorkshopの開催から約1年しか経っていないが,今回参加した両校の若手研究者8名のうち,前回も参加した者は3名のみであり,両校の博士課程の学生の入れ替わりが激しいことを窺わせた.京都大学の場合は昨年の参加者の多くがこの1年間で企業や官公庁,大学に就職したためであり,韓国の場合は上述のように若手研究者が多いため参加できる人数が限られているということと,留学等の事情によりKAISTを離れている場合があるためである.これは,仮に毎年このようなWorkshopを開催したとしても,常に新しいメンバーに新しい経験を積む機会を提供できるということであり,平生は大学内だけで研究していることの多い若手研究者,特に博士課程の学生にとっては良い経験,機会であるので,今後もこの種の交流を絶やさずに続けてもらいたい.

図7
図7 Banquetの様子
図8
図8 Banquet後の歓談
図9
図9 若手研究者のみの集い
図10
図10 お別れパーティーの様子

4. 京都大学の若手研究者のコメント

今回のWorkshopに参加した京都大学の若手研究者達のコメントを参考のために記載しておく.

山田 啓介(機械理工学専攻,松久研)

昨年の第1回Joint Workshopでも日本側の若手研究者の代表を務めたが,今年はHostとして京都大学で開催したので,プログラムの作成等の準備から当日の進行まで一通りのことを行い,前回とは異なる経験ができた.また,韓国で昨年お世話になった分の御返しができたのではないかと個人的に満足もしている.代表は仕事が多いことも事実だが,その分,相手と一番親しくなれるという役得もある.今後も多くの人に同様の立場を経験してもらえれば,と思う.最後に,今回のWorkshopを陰で支えてくれた本研究室の佐藤博則氏にも感謝の意を表したい.

坂東 麻衣(航空宇宙工学専攻,市川研)

昨年のジョイントシンポジウムに参加した縁で今回も発表をさせていただいた.研究分野が少し異なるなかでの発表であったが,普段の学会発表では得られない質問を受けることができた.さらに研究でのディスカッションだけでなく,Banquet等の交流会では,同世代の博士課程の学生らと気楽に会話する機会がもててよかった.

竹岡 郁(機械理工学専攻,小森雅研)

AAVCFでは,私の拙い英語での発表を,皆様に興味を持ってお聞きいただき感謝しております.韓国の先生方からは鋭い質問やコメントをいただき,今後研究を進めていく上で大いに参考になりました.韓国の学生の方からは積極的に声をかけていただき,和やかな雰囲気でコミュニケーションをとることができました.大変貴重な体験をさせていただき,ありがとうございました.

河野 大輔(機械理工学専攻,松原研)

AAVCFへは今年初めての参加でした.普段は自分の研究室内での議論・評価に偏りがちであるので,様々な研究室での研究を知ることができたのは貴重な経験になったと思います.また,今回は韓国の大学との共同研究会ということで,隣国の大学生の置かれている状況,考え方にも触れる機会を得ました.その中でも博士取得に6年必要であるということには驚きましたが,欧米の大学生と比較して,研究・就職などに対する考え方は我々と近いということを感じました.

金田 さやか(機械理工学専攻,椹木研)

KAISTの先生,学生さんの研究内容について知ることができたことももちろん大変よい経験でしたが,京大機械系の先生とお話する時間が得られたこと,他研究室との交流もできたことが,今年研究室を移った私にとっては大変ありがたい時間でした.異分野を知る機会を設けてくださってありがとうございました.

5. おわりに

参加者の協力を得て,無事にAAVCFは3日間の日程を終えた.以下に第2回Joint Workshopを終えての全体の感想と意見をまとめる.

博士課程の学生といえども,国際舞台で研究発表を行う機会は少なく,今回参加した京都大学の学生の国際学会の発表経験数は1回程度であり,KAISTの学生もほとんど海外で研究発表をしたことはないということだった.また,例え頻繁に国際学会に参加している場合でも,他国の参加者と交流を持つことができる機会は非常に限られていることを考えると,今回のように交流を重視した研究発表会は非常に意義深い.研究に関する意見・情報の交換や経験の蓄積だけでなく,国際的な人脈を構築できた点も非常に有益であった.

KAISTでは授業の数割を英語で開講しているため教員および学生の英語力が非常に高く,日本人の若手研究者にとってはよい刺激となった.また,大学のシステムや研究に対する考え方,博士号の持つ社会的意味の相違を知ることができ,国際的な感覚に幅ができた.お互いの比較により相手の利点を見つけるとともに我々のシステムが持つ長所を再確認し,それらを今後に生かすことができれば今回のWorkshopは大きな成功だったと言える.

本報告書が次回以降のさらなる成功に繋がれば幸いである.また,同様のWorkshopが他分野において開催されるきっかけとなれば,それ以上のことはない.